持続可能な社会へエネルギー政策を考える ~福島第一原発事故から10年の節目に
近年、命を脅かすほどの猛暑や局地的な大雨、大雪など、気候変動に伴う自然災害が多発しています。世界を見ても、森林火災や干ばつ、洪水、さらにバッタの異常発生など、生態系や食料問題にも大きく影響しています。また、気候変動により動物が生息地を失い、人間のいる居住地に逃げ込むことで、人間が病原体にさらされる可能性が高くなるとの指摘もあります。まさに私たちは今、新型コロナウイルスに翻弄されています。
このような現状を何とか食い止めるべく、各国はパリ協定に基づき地球温暖化対策に乗り出しています。日本も遅まきながら、昨年10月に「2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする」と表明しましたが、この達成には電力の脱炭素化が欠かせません。技術革新が進む中、化石燃料や原発に依存するのではなく、コストが下がりつつある再生可能エネルギーをより活用することを国の方針として中心に据え進めるべきと考えます。
しかし、国の「グリーン成長戦略」では、原子力発電について、可能な限り依存度を下げるとする一方、最大限に活用するとも明記されています。既存施設の再稼働とともに将来の新増設に含みを持たす内容です。
福島第一原発事故から既に10年が過ぎようとしていますが、未だ、ふるさとに戻れない人が約3万人いるといわれています。そして廃炉作業では、溶け落ちた核燃料は取り出せず、トリチウムなどの放射性物質を含む汚染水は敷地内にたまり続けています。
福島のこの10年間の人々の健康や暮らし、地元の復興を考えると、原発事故による代償はあまりにも大きく、原発ありきのエネルギー政策は考えられません。
環境を優先した再生可能エネルギーを地域活性化の起爆剤として、また、地域経済の柱として活用する自治体や企業が増えてきています。私たち消費者が購入する電力が、どこで、どのように作られているのか「エネルギーの見える化」を進めながら、持続可能なエネルギー政策について議論する時です。ともに声を上げていきましょう。