世代を超えた議論で 介護保険制度改革を
介護保険制度が始まって25年。2024年の改正では、自宅での暮らしを支える訪問介護の基本報酬が引き下げられました。東京商工リサーチの調べでは、2024年の訪問介護事業所の倒産と休廃業の合計件数は529件で、前年より102件増加しています。国分寺市でも、2件が廃止、1件が休止中とのことです。東京・生活者ネットワークは、2024年7月~10月に、訪問介護事業所、サービス利用者、自治体、地域包括支援センターの4つの実態調査を行いました。
●人材不足は深刻
東京の75歳以上の人口は181万人。そのうち単身世帯が4割、高齢者のみの世帯が3割です。介護を必要とする人が増えるなか、訪問介護事業所調査からは、人材不足と職員の高齢化、頻繁に行われる制度改正による事務の煩雑さが明らかになりました。
また、倒産が増えた要因として、人材獲得競争の激化や物価高騰、コロナ禍のダメージ等の厳しい運営が続いたところに、基本報酬の引き下げが追い打ちをかけたことがわかります。そもそも労働環境の厳しい介護業界です。労働に見合った賃金と、事業所が安定して継続できる報酬が必要です。しかし、介護保険制度は、税金と保険料の財源内訳が決まっていて、報酬やサービス量の増加は、介護保険料の値上げにつながります。
●なぜ訪問介護の基本報酬は引き下げられたのか
厚労省は、2022年度の経営実態調査で、訪問介護の利益率が他のサービスよりも高かったことを理由にしています。訪問介護には、大きく生活援助と身体介護があり、身体介護の方が報酬(単位数)が高く設定されています。認知症の初期においては、特に生活援助のスキルが必要ですが、生活援助を多く担う事業所ほど運営は厳しくなります。また、集合住宅を訪問する事業所が利益率を上げる一方で、離れた利用者宅を、雨の日も酷暑の日も一軒ずつ訪問する小規模事業所では、報酬に含まれない移動の時間がかかるなど、非効率で利益率は低くなります。実際に、小規模事業所の多くが赤字とも言われています。基本報酬を見直すにあたっては、現場の聞き取りを充分に行い、実態と乖離のない基礎データを活用すべきです。疲弊する現場の課題を直視し、小規模事業所の丁寧なケアが継続できる制度へと見直すよう国に求めます。
●給付と負担 どう考える?
利用者調査では、「特に困っていること」は、買い物やお風呂・トイレ掃除が多く、「欲しいサービス」は、通院などの付き添いや外出支援、緊急時への対応など、多岐にわたっています。地域の健康づくりや介護予防、社会参加などの活動と介護サービスが合わさり、ひとり一人の暮らしや地域を豊かにします。また、地域の総合相談窓口として周知が広がる地域包括支援センターでは、相談内容が複雑化し、業務過多になっている様子がわかりました。少子高齢社会の進行をふまえ、自分や親に介護が必要になった時に、どのような暮らしを望み、どの程度のケアを求めるのか、給付と負担の在り方についても率直に、若い世代とともに議論し、制度を変えていく必要があります。
