「介護保険制度」を考える~市民参加での議論を

2000年に始まった介護保険制度は、「家族介護」から「社会全体で介護を担う」制度へと大きく転換されるものと期待されました。しかし3年ごとの見直しによって、今再び家族介護へと逆戻りする懸念が大きくなっています。特に、「介護保険料が高くて負担」「介護人材がたりない」「必要なサービスが受けられない」など、さまざまな問題が噴出しています。介護が必要になっても、いかに自分らしく生きるのか、社会や暮らしの実態に合わせた制度へと再構築が必要と考えます。その議論を市民参加で進めませんか?

 

介護人材不足は致命的処遇改善は必須

 

利用する人の「自己決定、自己選択」により 医療・福祉のサービスを総合的に提供する介護保険制度。社会福祉法人や民間企業、NPO法人など多様な事業者が参入し、高齢期の暮らしになくてはならない重要な役割を担っています。実際に働いている方からは「やりがいのある仕事だ」と聞く一方で、慢性的な人材不足が続き、介護職の年齢層も高くなっています。その要因として、処遇(賃金)の低さが指摘されていますが、処遇改善を含む介護報酬(事業者に支払われる費用)と、40歳以上の市民が納める介護保険料とは密接に関わっています。ちなみに、介護保険の財源構成は、利用者負担分を除いて、公費(国・都・市)が50%、保険料が50%となっています。介護職が労働に見合った賃金を得て誇りをもって働けるように、基本の報酬をしっかりと保障し、人件費に確実に回る制度にする必要があります。介護職の不足により、サービスの低下、さらには必要なサービスが受けられないような事態は避けなければなりません。

 

介護保険に「予防」の観点が導入されて…

要支援1・2を対象とした「予防給付」は、2018年には、介護保険制度から外れ、自治体が行う総合事業へと転換されました。地域のNPO法人や社会福祉協議会などが行う住民主体のサービス提供を想定して始まった事業ですが、実態は、介護事業者が介護保険より低い単価で、訪問型、通所型サービスを提供しています。このような状況にもかかわらず、国では、要介護認定者にも総合事業を広げる検討が続いています。ひとり一人の持つ力を引き出しながら行う生活援助は非常に重要です。専門職が携わることで、認知症状も和らぐと言われています。専門職が参入する評価をしっかり行い、今後どのように介護予防・健康づくりを展開するのか展望を描く必要があります。

今後に向けて

ひとり暮らし高齢者が増えています。社会から孤立しない地域づくりや、認知症になっても安心なまちづくりを市民力・地域力で進めると同時に、安心して生きるための支えとなる介護保険制度を機能させ持続する必要があります。

国や都による公費の財源割合を増やし、高齢化率や介護人材の有無、地域資源の多様性など、自治体の状況や地域性を踏まえた支援の実現をめざし、大胆な検討が必要と考えます。それには、どのようなケアに、どの程度の負担ができるのか、市民参加での議論することも重要です。

介護保険の財源構成